監修:広島大学病院 輸血部 藤井 輝久 先生
血友病患者さんの日常生活の工夫や注意点について、年代別にまとめました。
ここでは、中学・高校生の方についてご紹介いたします。
思春期は親から自立して、自己を確立しようとする時期で、子どもが干渉を疎ましく思うのは、ごく当たり前のことです。治療も、成長とともに自己管理の方法を学んでいくので、本人の考えを聞きながら見守りましょう。
安全な学校生活を送るためにも、学校関係者に病名も含めた正確な知識を伝えておくのが望ましいでしょう。伝える先は、一般的には担任教師と体育教師、養護教諭と考える親御さんが多いようです。
実際に説明する際には、病気の特徴や集団生活での注意事項、出血時の対応などについて病院側から情報を提供することもできます。病院で主治医や看護師が、親御さんと同席のうえ学校関係者に説明する場を設けることもできます。疑問や不安に感じることがあれば、医療者に相談してください。
血友病は血が止まりにくい病気であることや、出血時には早く凝固因子製剤を注射するため、授業を抜けたり早退したりすることなどを同級生や友だちも知ってくれていたら、より安心です。一方で、血友病のことを同級生や友だちが理解するのは難しい場合があるかもしれません。
いつ、どのように説明するかは、まずは親御さんと医療者で考え、それを担任教師に相談するとよいでしょう。血友病という病名ではなく、「膝が急に痛くなることがある」「腫れやすい」「あざができやすい」「出血時は早く帰ることもある」といったように、症状や状態を説明することでうまくいった例もあります。
中学生になると柔道や剣道などの武術が体育の授業で行われます。受け身や素振り、作法の練習などは問題ありませんが、経験の少ない生徒どうしの試合は無理な負担がかかって、けがや出血が起きる可能性もあり、注意が必要です。
お子さんごとに慎重に判断する場合もあります。例えば、足首に出血をくり返しているようであれば、素足で行う剣道の踏み込みでも出血します。他に足首に負担がかかるものとしては、縄跳びやダンス、跳び箱などがあります。主治医と相談しながら判断することが大切です。
中学生になってから口数が減って、きちんと注射しているか心配です。
思春期のポイントは、「親に言われてする」注射を、「自分に必要だからする」注射へとスイッチを切り替えることです。
親御さんとしては、失敗が見えると、口をはさみたい気持ちにもなるでしょう。でも、失敗が人を成長させます。出血への気づきが早くなり、自己注射も上手になるものです。本人なりの試行錯誤を頭ごなしに否定したり、失敗を厳しく叱ったりするのではなく、本人の考えを聞きながら見守りましょう。
「自分のための注射」という意識をもたせるタイミングは。
お子さんの中に「○○をやりたい」、あるいは「そうはなりたくない、したくない」という気持ちが芽生えた時が、そのタイミングです。それがいつかは、お子さん一人ひとりで違います。
中学に入学して好きな部活がしたいと思った時や、高校生になって「友だちと旅行に行きたい」と思った時、子どもは自分から単位数や、緊急時の対応、みんなはどうしているのかを質問してくるでしょう。その時に「あなたはまだ無理」などと言わず、上手に受け止めてください。
将来の進路に血友病が影響するのではないかと心配です。
「定期注射はずっと必要なの?」と言われたら、どう答えたらよいでしょうか。
多くの血友病患者さんは、この年代に自己判断で注射をやめたり、正しい使い方を守らなかったりしているものです。それでもたまたま出血しない状態が続けば、「あの注射は、本当にずっとしなければならないの?」という疑問がさらに生じてきます。
しかし、よほどの軽症でない限り、出血のない状態を維持することはできません。重症・中等症であれば定期輸注は続けたほうがよいのです。
どのように注射を続けていくかは、お子さんの性格、出血状態や生活環境によって異なります。生活の変化、成長に応じて調整することも必要です。主治医や医療スタッフに相談しながら、その子が続けやすい回数、投与量、溶解方法や記録法などを考えていきましょう。
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※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。
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