監修:北九州安部山公園病院 酒井 道生 先生
血友病患者さんの日常生活の工夫や注意点について、年代別にまとめました。
ここでは、乳児期の患者さんについてご紹介いたします。
お子さんが血友病と診断され、病気や治療に向き合うことに不安を抱くのはごく自然なことです。まずは血友病に関する正しい知識をもち、適切な治療を続けましょう。それとともに、普段のくらしの中で工夫できることがあります。
生後数ヵ月の赤ちゃんでは、凝固因子製剤の注射が必要なほどの出血が起こることはめったにありません。つかまり立ちやよちよち歩きなど、お子さんの動きが活発になればなるほど、あちこちにぶつかったり、転んだり、おもちゃを踏んづけたりして、出血の機会が増えてきます。衣類や住環境の工夫により打撲や転倒による衝撃をやわらげ、出血の機会を減らしましょう。
出血の多くは内出血で、体内に血液がたまって血腫をつくります。この血腫により痛みや腫れなどの症状が現れるのです。このタイプの出血には皮下出血、関節内出血、筋肉内出血、頭蓋内出血などが、血腫をつくらない出血としては鼻出血(鼻血)、口腔内出血、血尿・血便などがあります。
出血が疑われても、すべて病院での注射が必要になるわけではありません。お子さんの様子をよく観察し、
・緊急性の高い重篤な出血
・早めの凝固因子補充が必要な出血
・少し様子を見てよい出血(軽症出血)
のどれに当てはまるかを判断して、適切に受診することが大切です。
出血が疑われるときに受診や凝固因子製剤の補充が必要かどうかを判断する目安は次の通りです。
緊急度 | 出血の場所 | 出血が疑われる症状 |
---|---|---|
緊急性の高い 重篤な出血 | 頭蓋内出血 ※頭を打ったときは、症状がなくてもまず主治医に連絡を。 口の奥の外傷など |
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早めの凝固因子補充が 必要な場合 |
関節内出血 |
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筋肉内出血 |
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その他の出血 |
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少し様子を見てよい出血 (軽症出血) | 皮下出血 |
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はじめのうちは判断に迷うこともあるでしょう。そんなときは、主治医や担当の看護師に電話で連絡して状況を伝え、指示を受けるようにしてください。経験を重ねるうちに、お子さんの様子を落ち着いて観察し、適切な判断や行動がとれるようになります。
出血時は、上に掲げた表の緊急度に応じて対応しますが、合わせて出血部位のRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)を行うようにしましょう。
重症血友病のお子さんでは、歩きはじめる1歳前後から関節内出血が見られるようになります。1~2年に1回は、整形外科で定期検診を受けましょう。関節に異常の見られないうちから整形外科で定期検診を受けていれば、血友病性関節症が発症しても早期に適切に対応できます。
そして、血友病性関節症の予防には凝固因子製剤の定期補充療法が有効です。
血友病の治療や日々のくらしを、他のお子さんとご家族はどうしているか、気になりますよね。病気について話ができる人たちと出会うきっかけの1つとして、患者会に参加してみるのもよいでしょう。同じ血友病のお子さんをもつご家族との出会いは大きな助けになります。特に、日々の生活に根差した情報は、これから血友病の治療に取り組んでいくうえで多くのヒントになるでしょう。
患者会は、通常、地域ごとに患者さんおよびその家族が自主的に集まって構成され、規模も活動内容はさまざまですが、医師や看護師による講演会、勉強会、サマーキャンプなどを開催しているところが多いようです。
お住いの地域の患者会については、主治医や看護師に尋ねてみてください。
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※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。
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