家庭療法

監修:聖マリアンナ医科大学小児科学 名誉教授 瀧 正志 先生

血友病は凝固因子の不足が原因であるため、凝固因子製剤を注射する補充療法が基本的な治療です。現在、家庭療法(在宅自己注射療法)として患者さんが自分で、または家族が患者さんに対して凝固因子製剤を注射することが健康保険で認められています。

患者さんは出血時に医療機関に行かなくても速やかに凝固因子の補充ができ、早期の止血が可能です。そうすることで、苦痛の時間が短くなり、血友病性関節症などの合併症のリスクを軽減できます。最近では、非出血時に定期的に凝固因子製剤を補充し、出血の防止を図る「定期補充療法」が行われています。

いずれにしても、注射という医療行為を医師免許のない患者さんやその家族が行うことになるため、家庭療法の目的・意義を十分に理解し、決まりを守って行うことが重要です。

家庭療法の目的・意義

  • 1 出血時の早期補充療法あるいは定期補充療法を医療施設以外で効率よく行うことにより、出血の苦痛を予防・軽減させる
  • 2 出血による後遺症および慢性障害の発生を予防・軽減させる
  • 3 出血時に通院する際の身体的、時間的、経済的負担を減らす
  • 4 出血に伴う学校生活や社会生活の質の低下を軽減させる
  • 5 活用内容や行動範囲を広げ、社会適応をはかり、心身両面での自立を促す

患者さんやその家族の遵守事項

  • 1 定期的(最低3カ月ごと)に受診すること
  • 2 家庭治療に関して担当医・医療スタッフの評価と指導を受けること
  • 3 治療経過や製剤の家庭内在庫状況を記録し、病院に定期的に提出すること
  • 4 製剤は規定の方法で管理し、奨められた注射量、注射方法を守ること
  • 5 製剤は、兄弟を含む患者さんの間で流用しないこと
  • 6 針や注射器などの医療廃棄物を適切に処理すること
  • 7 出血症状が強いときや判断に迷うときには担当医・医療スタッフに連絡すること

一般社団法人日本血栓止血学会「インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版」より改変

 

 

※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。

JP24HRBD00018

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