Sさん 愛知県在住 50歳代後半 血友病B(重症)写真はイメージです。
コピー機関係の仕事に就くSさん。舞台鑑賞と旅行が趣味で、特にお笑いの舞台が大好き。舞台から「笑い」を受け取り、自ら「笑う」ことで、日々元気に生きるSさんは 、還暦間近 。それでもなお「新しい趣味がほしい」と人生を前向きに楽しんでいます。
*2023年7月取材
現在は自宅で週1回の自己注射をしていますが、主治医の先生が1度の受診で6~7週間分の製剤をまとめて出してくれることもあって、最近は治療がずいぶんラクになりました。通院回数も減って以前と比べて時間ができているので、その分趣味の舞台鑑賞や旅行にもっと行きたいですね。お金が続く限りですが(笑)。
これまでの人生を振り返ってみると、病気を受け入れながら、それでもできることを精一杯楽しくやってきたと思っています。自分は外に出掛けることが好きだし、行く場所やすることをきちんと選べば、病気も関係なく楽しめます。個人的には還暦も近いし、さらに新しい趣味を見つけたいと思っています。人生、まだまだこれから楽しむつもりです。
小学校に入る前後くらいのとき。すぐに関節が痛くなったり、鼻血が出たりしたので「それはあなたがこういう病気だからだよ」と親から聞いたのが、初めて病名を知ったタイミングです。
歯が抜けるたびに入院でしたから、それはもう大変でした。運動もそれなりに好きだったんですが、高学年になるにつれて下肢の痛みも強くなり、満足に走れないようになっていきました。それでもこの頃は、自分がどうこうではなく「病気のことはあまり人に言わない方がいいかな」という、周囲への意識がむしろ強かったように思います。
幼少期から「血が出たら止血剤を飲む※」「関節が痛くなったら湿布を貼る※」程度で、特に治療はしていませんでした。当時は今みたいに専門の先生に診てもらっていなかったので。18歳のときに十二指腸潰瘍を患って、初めて血液製剤があることを知り、それからはずっとそれを投与してきています。
治療で転機があったのはけっこう最近で、まずは2年ほど前から週2回程度だった投与回数が、週1回でよくなりました。加えて数か月前から、自宅での自己注射に切り替えたんです。以前は「手続きが面倒」「どのみち頻繁に通院する」と聞いていたのであまりメリットを感じませんでした。ただ、先生から1回に6~7週間分を出してくれると聞き決断しましたね。人間、ラクな方がいいですから(笑)。通院していた頃はお正月やGWなど連休があるときに困ることが多くて。今はその心配からも解放されましたし、医療の進歩に感謝ですね。
※1960~1970年代の対症療法に関する記載です。出血時や痛みを感じる際の治療は主治医の指示に従ってください。
国内旅行が好きで、46都道府県に泊まったことがあります。近々宮崎県に宿泊して、夢の全国制覇を果たそうと考えています。旅はいわゆる観光で、グルメを目的にしたものが多いですね。ご当地グルメを紹介するTV番組で美味しそうだったものを目当てにしたり、例えば夏ならその地の名物かき氷など、季節のものを味わったりします。
旅は宿泊先も大切です。個人的に印象的だったのは、白浜と神戸のホテル。
どちらもバイキングがすごく美味しかったのを覚えています。やっぱり美味しいものを食べるのは元気の源ですね。
ちなみに、今日もこの取材のあと(19時頃)、観光のため愛知県より山口県に向けて出発します。自分で車を運転して向かうので……夜中も休憩しながらがんばります!
エンターテインメント全般が好きで、特にお笑いやお芝居、コンサートなど舞台を観に行くのが好きですね。最近は少し減りましたけど、これまで年間で100回くらいは行っていたと思います。平日は仕事後でも行くし、休みの日は昼と夜で2回とか。妻や友人と、もしくは1人でと、気になる舞台があればどんどん行きます。
一方で、音楽フェスなどスタンディングの催しにはあまり行きません。やっぱり立ち見になってしまうと膝に負担がかかりすぎるので。同じ理由で、花火大会や登山などもちょっと難しいです。自分の体でできることを精一杯楽しんでいった結果が、今の趣味なんだと思います。
昔とは違って、今は頻繁に通院することなく普通に暮らせています。私にとって自己注射は、簡単に不足しているものを補う、メガネをかけたり、入れ歯を入れたりするようなもの。手軽な治療で済むようになっているのは医療技術の進歩のおかげだと思うので、ものすごくありがたいと感じています。
ひとつ言えるとすれば今、両膝と左肘に人工関節を入れているんです。特に、今入れていない右肘はすぐ痛むんですね。だから左手を使うことが増えるのですが、整形外科の先生が仰るには「人工関節を入れた肘の方の手で、少しでも重たいと感じる物は持たないでほしい」と。また足が不自由な人は杖を使いがちですが、私の場合は肘が痛くなるので使うことを避けています。重たい物を持つのに苦労しているので、このあたりも医療技術の進歩があると嬉しいですね。
アクティブに生きる私の原動力
「笑う」ことで、自分もまわりも元気になる!
舞台のなかでもお笑いが一番好きで、特に物語性のあるコントに惹かれます。演者で言えば、さらば青春の光、空気階段、東京03、ジャルジャル、Aマッソとかかな。演技的な面白さとネタの面白さ、2つを同時に楽しめるところが魅力ですね。先週なんて6日間連続でお笑いの舞台を観に行きましたよ。
お笑いの舞台で笑うことはもちろん、日頃からよく笑うことは自分の元気の源になっていると感じます。笑っていると、自分自身はもちろん、まわりの人も楽しい気分になりますよね。人生いろいろなことがありますが、できる限り笑う時間を増やそうと意識することで、毎日がより楽しくなるんじゃないかなと思います
愛知医科大学病院 中央臨床検査部 部長 中山 享之 先生
Sさんは以前は他の病院に通院されていましたが、本学へのご紹介を経て、初めの頃は不定期に、そして現在では定期的に通院されています。診療の中で、micro
bleedingを抑えられていなかったのではないかと思うこともありましたが、現在は治療に満足されているようで私も嬉しく思います。
Sさんは同年代の他の患者さんと同じように関節障害があり、人工関節手術も受けられております。日常の生活に不便を感じることも多いかと思いますが、過去の医療体制に対し恨みがましいことを言う事は全くなく非常に前向きな方です。肘の人工関節置換術を受けられて可動域が広がったため自己注射にもトライして習得されました。頭が下がる思いです。
いろいろなところにご旅行をするのがお好きなようで、その積極的な姿に私も勇気づけられています。でも関節障害がなければ、もっと人生を楽しんでいただくことも可能ではなかったのかと忸怩たる思いも少なからずありますが、これからも診療を通じて、Sさんの人生をサポートしていきたいと思っています。
凝固因子製剤の進歩により、出血傾向の管理は随分と容易になりました。
そのため、ややもすると血友病のことを簡単に考えている若い患者さんがいるように感じます。教育や手厚いケアを通じ、患者さんが出血傾向のない方と同じ人生を歩めるように本学職員一同で努力したいと思っています。
※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。
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