監修:広島大学病院 輸血部 藤井 輝久 先生
血友病患者さんの日常生活の工夫や注意点について、年代別にまとめました。
ここでは、中高年期の方についてご紹介いたします。
医療の進歩により、血友病患者さんは病気とともに長生きすることが可能になっています。加齢に伴う生理的変化や生活習慣病、リタイア後の生き方などに気を配りながら、中高年期以降も充実した毎日を過ごしましょう。
血友病患者さんは、他の成人男性と比べて、
1. 高血圧は多い
2. 糖尿病はほぼ同じ
3. 脂質異常症はやや少ない
4. 心血管疾患は少ないものの増加傾向
5. 脳血管疾患は多い
といった傾向が示されています。
そのため、このような生活習慣病の予防を心がけましょう。
・禁煙
・運動不足を避ける
・脂質・糖質や塩分の過剰摂取を避ける
・野菜の摂取不足に注意する
・ストレスを避ける など
医師と相談しながら血圧測定や血液検査などを受け、必要に応じて循環器、内分泌・糖尿病などの各専門医を受診しましょう。
関節の保護や、関節の機能維持のために筋力強化が必要です。主治医や理学療法士と相談のうえで、エクササイズを続けましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
また、体力にも自信をもち、元気に生きるためにもスポーツが役立ちます。自分で興味があり、けがや危害が生じるリスクが少ないスポーツを選びましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
中高年の患者さんでも定期輸注(定期補充療法)は重要で、関節症の予防・進行遅延、あるいは出血回数の減少で、欠席や欠勤回数を減らして、一般の方とほぼ同様な生活が期待できます。また、高齢の患者さんは頭蓋内出血のリスクが高まりますが、定期輸注でそのリスクが低下すると期待できます。
一方で、自己注射を開始してから年月がたつと、基本的な知識を忘れたり、注射の方法が自己流になったりすることも少なくありません。定期的に病院で知識や注射のしかたを確認してもらうようにします。
通院の頻度は?
出血がなく、関節の状態が安定している場合でも、1~3カ月ごとには通院しましょう。また半年から1年ごとに身体の状態をチェックしてもらう必要があります。
特に、関節障害のある、なしにかかわらず、定期的な関節のチェックが大事です。関節症の徴候が現れても、チェックを受けていれば早期に適切なタイミングで治療でき、悪化を防ぐことができます。
老後に備えるには?
血友病治療の進歩により、血友病患者さんも平均的な寿命を生きることができるようになりつつあります。そのため、定年後どのように過ごすかについても準備が必要です。
血友病の治療は、公的な医療費助成を利用すれば医療費の自己負担はありません。詳しくはこちらをご覧ください。
その一方、老後に介護が必要になる場合や施設への入所などについては、費用負担が発生します。いま40~50代の方は、老後に備えた蓄えを始めてみてはいかがでしょうか。
介護保険制度など高齢者の生活を支える制度のしくみや手続きについては、お住いの地方自治体の窓口に相談しましょう。
※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。
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